テレビ番組を見ていて、「これはさすがに盛ってるでしょ」と感じたことはありませんか?どこか現実味に欠け、ちょっと笑える──でも、よく考えるとモヤモヤする。そんな“演出”と“捏造”の境界線が、いま改めて問われています。
2025年3月24日、日本テレビのバラエティ番組『月曜から夜ふかし』で放送された街頭インタビューに登場したのは、中国出身の女性でした。
番組内で彼女が語ったとされる発言──
「あんまり中国にカラス飛んでるのがいないですね」
「みんな食べてるから少ないです」
「とにかく煮込んで食べて終わり」
このやりとりに、多くの視聴者が驚き、あるいは苦笑したかもしれません。
しかし、これらの発言は実際には彼女の言葉ではなく、番組制作側がまったく別の文脈で話した内容を切り貼りし、「中国ではカラスを食べる文化がある」という印象を意図的に作り上げたものでした。
放送後、中国のSNS(微博など)ではこの件が瞬く間に拡散され、激しい批判が巻き起こります。
「事実のねつ造」「悪質な偏見の再生産」といった声が相次ぎ、日本テレビは数日後、公式サイトで謝罪。中国語訳も併記した文書を掲載し、女性本人と視聴者に向けて深く謝罪の意を示しました。
しかし、この問題を「単なる編集ミス」として片付けてよいのでしょうか?
むしろ、「笑えるネタ」として異文化を歪め、視聴者の好奇心や偏見をあおる構図を意図的に作ったという点で、極めて悪質なケースと言えるでしょう。
バラエティ番組において「外国人」や「異文化」は、しばしば“おもしろコンテンツ”として消費されがちです。見慣れない習慣や料理、話し方のクセなどが映像やテロップで強調され、笑いに仕立てられる。しかしそれは、本当に健全な「笑い」なのでしょうか?今回の「カラス発言」も、視聴者に「マジで?」「さすが中国」と驚かせ、揶揄させる意図をもって編集されたものでした。
しかしこの“笑い”は、事実に基づかないステレオタイプによって成り立っており、実際には発言者本人もそのようなことは言っていません。
これは明確に、「異文化をでっち上げて笑う」構図であり、笑いではなく、差別と偏見の再生産に他なりません。このような事態の背景には、テレビ業界に根強く残る“撮れ高至上主義”の文化もあるでしょう。
街頭インタビューでは、何百人に声をかけても使える映像はごくわずか。その中で、なんとか“ウケる素材”を作ろうと、制作現場は編集に頼らざるを得なくなります。
視聴率が至上命題の世界では、「少し盛る」「少し脚色する」ことが常態化している。しかし、今回のように内容を“捏造”し、全く言っていないことを言ったかのように編集するのは、明確に一線を越えています。
しかも、そのターゲットが「中国」という他文化であったことは、問題の根をいっそう深くしています。
近年、テレビを含むメディアでは、異文化や外国人を扱う際の感度がより厳しく求められるようになっています。
SNSの普及により、当事者やそのコミュニティの声が即座に広まり、「知らなかった」では済まされなくなりました。
「やらせ」「捏造」「印象操作」「BPO(放送倫理・番組向上機構)」といった言葉がニュースを賑わすたびに、メディアへの信頼は少しずつ損なわれているのです。
もちろん、バラエティ番組には“演出”の自由があり、それ自体が悪とは言えません。
しかし、それが「誰かの文化を歪めて作られた笑い」であるならば、それはもはや娯楽ではなく、“笑ってはいけない笑い”です。
今回の件で日本テレビは謝罪を表明しましたが、それで終わりではありません。
なぜこのような編集が許されたのか、なぜ放送前に気づくことができなかったのか。
再発防止のためには、制作現場だけでなく、視聴者である私たち自身も、「テレビの笑い」に対してもっと批判的な視点を持つことが求められています。
「これは本当に事実なのか?」
「この笑いの裏で、誰かが傷ついていないか?」
そんな問いを持ちながらテレビと向き合うこと。
その姿勢こそが、より良いメディア環境を育てていく第一歩ではないでしょうか。
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